今でも鮮明に覚えているのは、あの湖の冴えたコバルトブルーと白いスワンの羽の色である。
高校二年の時私は毎週日曜日、郊外の家からバスに乗って30分ある都会の街まで出かけて行った。英会話教室に通うためである。混とんとした思春期の魂をかかえ孤独だった私は、その鬱屈した気分から逃れたいと思った。ネイティブアメリカ人の留学生が教師と人づてに聞き、何か未知の世界に乗り込むような気持ちだった。
道はばは広いがうら寂しい通りを抜けバスが大きく右に曲がると、一気に視界が変わり小さな湖とそれにかかる木橋が見えた。湖の前に古い家がありその横でバスが止まる。そこは私が通う教室の一駅前のバス停で、バスの窓から見ると家の前に細い道がずっと奥にある小さな木戸まで続いていた。
それは庭の一部らしく、道の前つまり湖の岸辺にそって羊歯や水仙などが植えられ、縁側の踏み石らしきもの、キラキラと反射する廊下のガラス戸などがかろうじて見えた。それ以上は何も見えない。家全体は竹林に囲まれているのだから。
湖にはいつも白いスワンが二匹、湖面をすべっていた。そんな風光明媚な家が私に、何かしらの関わりがあると分かったのはずっとあとのことだった。
