家に帰ってリビングをのぞく

家に帰ってリビングをのぞくと、祖父(母の父)と従弟(母の弟の子)が私を見た。従弟のケンタはまだ9才だ。でも2才は若く見える。東京から遊びに来てちょうど一週間になる。二人とも英語が話せず日本語カタコトの私とはあまり接点はない。話しかけようとすると逃げてしまう。

そんな彼らが今日はなぜか私をじっと見つめる。二人して人差し指で二階をゆびさし見つめる。人差し指で二階をつんつんして見つめる。「どうしたの?」と聞くがもちろん返事はない.

Japanese boy doing handheld fireworks (second grade at elementary school)

二階に上がり自室のドアを開けると、ベッドの上にブルースがあお向けに寝ている。頭の下に両手を組んで。「あんた、ここで何してるの!」私は怒鳴った。彼は上体を起こしニヤリと笑った。

先生にエイミーの様子を見て来いって言われたんだよ」「うそばっかり、病気で早退した私の後をなんで先生がつけさせるのよ!」「病気で早退?」ブルースがまたニヤリと笑った。この男はにやりとしか笑わないサイコパスのストーカーだ。

選択科目の外国語Spanishが嫌で仮病で早退したのに、帰ったら変態人間のブルースが待っていた。祖父と従弟を煙に巻いてドカドカ二階に上がったのだ。ハイスクールギャングの彼に見込まれた私は、蛇とねずみの関係。ギャングはギャングでも心理的に絞め殺してしまう陰気な奴。

ブルースはサイコパスとしての特徴を豊富に兼ね備えている。まず平気で嘘をつく、自己中心的、優しさの欠如、自分の非を認めない、口達者、始末に負えないナルシスト、などなど。彼も日本人と白人の混血、それを理由に私をストーカーしている。

一週間前、教室の窓から生徒たちが身を乗り出し大騒ぎをしていたので見ると、あいつがショーツ一枚でグラウンドを走りまくっていた。背中に星条旗をひるがえし下手糞な字で胸に書きなぐったI LOVE AMYの赤文字が、発狂するかと思うほど恥ずかしかった。私の名前はAMYだから。

US Flag WWI-WWII (48 stars)

後で文句を言うと「バカだなーあれはAMY CRAGGの事だよ」「AMY CRAGG?」「ほら、マラソン走者の、オリンピックに何回も出た。東京で金メダルを取れるように気合を入れたんだ」それから私を蔑むように見て「君は実に自意識過剰だね。前から思っていたけど」またもやニヤリと笑った。

私は父はフランス系のアメリカ人、母は日本人の交配で産まれた。でも混血で良かったと思う事は一度もない。折れ耳で人気のスコティッシュフォールドは、その折れ耳が可愛いと品種改良で何度も交配を続けさせられ、軟骨異常のリスクを抱え産まれて来る。私は身体的なリスクはないが、胸の中にいつもチクチクとうずく寂しさのようなものがある。白人でもない日本人でもないよりどころのない寂しさ、それが私をイライラさせる。

ブルースはあいつの事だから自分を、超高級の、いや超超超高級のハイブリッドなペット犬ぐらいには思っているに違いない。女にもてるからいい気になって学校ではいつもはしゃいでいる。「あんたすごいもてるじゃないの、私なんかつけまわさなくったって間に合ってるんじゃないの」ある日そう言った事があった。

するとあいつは糞真面目な顔で「僕は君の日本的な静けさが好きなんだ、うるさい子は嫌だよ。それに体のサイズもちょうど良い」と抜かした。この頃は平気で私の家にやって来て、私の部屋には入れないから、ただあたりをうろうろしている。

東京から来た祖父と従弟はまだ滞在している。二人とも母とだけ喋って父は黙殺されている。いったい何が面白くて滞在を延ばすのかと思うが、帰らないからしょうがない。両親はしばらくあちこち連れて行ってたが、喜怒哀楽を絶対表現しない二人にあきれ果て、この頃は単なる空気の存在としてしか見ない。

そんな彼らがあした日本に帰ると言う日が来た。裏庭でバーベキューをしていたら、裏木戸を開けブルースがやって来た。「ヘーイ」」と気安げに片手をあげニコニコしている。すると驚いた事にケンタが「ヘーイ」と片手を上げた。「ブルースはケンタのお気に入りだから招待したのよ」と母が言う。

Selection of meat on a portable barbecue

二人とも日本アニメのドラゴンボールZの大ファンで意気投合したそうだ。スペアリブで口をべとべとさせ楽しそうに話してる。ブルースが日本語を話せるなんて知らなかった。

彼らが帰って一週間ほどしてケンタからThank Youカードが届いた。アメリカで一番楽しかった事はブルースと知り合えた事とある。あの無口で人見知りなケンタにそこまで言わせるなんて。そんな特技がブルースにあったなんて知らなかった。

サイコパスは案外この私かも知れない。

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