世の中には水やりや日当たりなど考えなくても、自身のオーラで植物を育てる奇特な人がいる。そんな人を私は知っている。彼女は植物のための庭やポーチこそなかったが、リビングの大きな窓際の大きなテーブルに、さまざまな鉢植えを置き、その前で食事や化粧をしていた。名前を蘭子(らんこ)と言う。蘭の花のようにとても華やかな雰囲気があった。

テーブルの上にはセントポーリア、シクラメン、ヒヤシンス等が所狭しと置かれ、多肉植物などは小さな花さえ付けている。ある日化粧をしていた彼女の口紅の色が、テーブルの上のアンスリュームの葉の真っ赤な色に酷似していたので、ドキリとした事を覚えている。
植物は話をしてやるとよく育つと皆が言うので「食事をしたり化粧をする時に、前にいる植物と話をするんですか?」と聞くと「まさか」と笑った。彼女のリビングには他にも壁際に、色んな観葉植物が置いてありどれも健康的だ。あるとき細長い葉に縞模様のあるドラセナの木が天井まで届き、「てっぺんがぐにゃりと曲がってたから、はさみでちょんぎってやったわよ」ともったいない事を言う。
ドラセナは幸福の木と言われるから、蘭子が幸福だから木が良く育つのか、木が幸福だから蘭子が幸せなのか?どちらのオーラが強いのか。ただ彼女は天真爛漫で何事にも楽観的。そのノンシャランな生き方が、植物をリラックスさせるのだろう。
リビングの中央に座った彼女がこちらを振り向くと、そのまま『植物の国の女王』のようだった。
