ポーチのそばのとても高い木から、、、 ポーチのそばの高い木の上から、男が私をみている。私は居間のカウチでじっと見返す。二人の間にある大きな一枚板ガラス戸で、たがいの緊張が少しやわらぐ。ものすごく風の強い太陽がまぶしい午後で、男が立つ大きなオリーブの老木の梢が、大空にざわざわざわざわと前後左右に激しくゆれている。そこからもれる木漏れ日もまたざわざわ。オリーブの実が時おりヒョウのように、パディオの板張りの床にバラバラと落ちてくる。それを見上げながら、オリーブの葉はどこかトンボの羽に似ているなと思った。男は強い風に吹き飛ばされそうになりながら、何とか持ちこたえこちらを見ている。青空に揺れる大枝と木漏れ日をバックに立つ男は、何かしら雄々しく気高く見え、他の人とは違っても見える。見つめられ見つめ返しているうちにふと私は、彼が初恋の男に酷似している事に気づいた。目が可愛い。 思い出したくもないあの身勝手でずるい過去の出来事。その男とは口もきかないツンデレの高校時代が幕を閉じると、何かひとつ悶着起こしたく、よせばいいのにわざわざラブレターを出し、それもかなり過激な。男が乗って来るとただ逃げまくりとうとう一度も会わず、あとは知らんぷり、卑劣きわまりない非道な私のやり方。ずいぶんと向こうも腹を立てたことだろう。 その男がたった今、木の上から私を見つめている。いっときも目を離さず。強い風に吹き飛ばされそうになりながらも、じっと見つめている。こちらが目をそらしまた戻すと、同じ目つきで同じ表情で、みつめまくる男がそこにいる。 次第に腹立たしくなってきた。人はあまりに見つめられると、イライラしてくるものだ。イライラ感で頭に血が上り、話をつけるためガラス戸に近づく。二十年の歳月を経て、何を今さら私のポーチへ、執念深いお方だと戸を開けたその時だった。ドスン!男が木から落ちて、板張りの床にあおむけに倒れた。白い腹を見せころんころんと二、三度寝返りを打ち「ニャー」と鳴いた。男は野良猫だった。 共有: X で共有 (新しいウィンドウで開きます) X Facebook で共有 (新しいウィンドウで開きます) Facebook いいね 読み込み中… 関連